Claude Codeのセキュリティ ── 企業導入時のチェックリスト10項目と、A4一枚のガイドライン
「Claude Codeを会社で使いたいが、情シスや法務から『セキュリティは大丈夫か』と聞かれて答えに詰まった」。経営者の方から、この相談は繰り返し受けます。
AIエージェントはPCのファイルを読み書きし、ブラウザを操作します。チャット型のAIとは、考えるべき点が違います。ただし、難しい話ではありません。決めるべきことを先に決めておけば、たいてい承認されます。
実際の導入現場で毎回決めている10項目と、社内に配るA4一枚のガイドラインの中身を、そのまま書きます。
まず押さえる構造 ── 守りは2層でできている
Claude Codeのセキュリティは、2つの層で成り立っています。
- 提供元(Anthropic)側の保護:通信の暗号化、第三者認証、データの取り扱い方針
- 自社の使い方の設計:何を渡すか、どこまで触らせるか、誰が確認するか
1層目は、こちらで変えられません。公表されている方針を確認して、それで足りるかを判断するだけです。実務で差が出るのは、2層目です。事故のほとんどは、AIの性能ではなく、使い方の設計で起きます。
データはモデルの学習に使われるのか
ここは最初に聞かれる点なので、正確に書きます。2026年9月時点の公式ページに基づく内容で、変更されることがあるため最新の記載を確認してください。
| プラン | 学習への利用 | 対応 |
|---|---|---|
| 個人向け(Free/Pro/Max) | プライバシー設定で「モデル改善」を許可した場合に使われる | 設定でオフにする |
| 法人向け(Team/Enterprise/API) | 既定で学習に使わない | 契約条件を確認する |
以前は「有料プランなら学習に使われない」と説明されることがありましたが、個人向けプランは設定次第です。導入時に設定を確認し、オフにしたことを記録しておいてください。法人で複数人が使うなら、Teamプラン以上にすると管理が楽になります。
企業導入時のチェックリスト10項目
経営者・情シス・法務で共有する項目です。
1. プランと、学習利用の設定
- 有料プランを契約している
- 個人向けプランの場合、プライバシー設定で「モデル改善」をオフにした
- 設定を確認した日付と担当者を記録した
2. 触ってよいフォルダの線引き
- 作業用のフォルダを決め、その中だけを操作対象にした
- 人事・顧客・財務のフォルダを対象から外した
- 最初は狭く、慣れてから広げる方針を共有した
不動産会社の案件では、作業対象のフォルダの直下に運用ルールのファイルを置き、全員がそこを見る形にしました。フォルダの線引きは、権限の話であると同時に、社内で迷わないための話でもあります。
3. 扱ってよい情報の線引き
- 入れてよい情報/入れてはいけない情報を一覧にした
- マイナンバー、健康情報、未公開の財務情報は対象外にした
- 取引先から預かった情報の扱いを決めた(NDAの範囲)
社労士事務所のように扱う情報が重い業種では、マイナンバーは最初から対象外にするのが無難です。顧問先ごとにフォルダとルールを分け、別の顧問先の作業に混ざらないようにします。
4. 外に出す前に人が見る工程
- AIの出力をそのまま送信・公開・提出しない
- 確認する人と、確認する項目を決めた
- 金額の大きい業務は、公開や送付の手前で必ず止める
不動産会社では、ポータルサイトへの物件入稿を下書き保存の手前で止め、公開の判断は人が行う運用にしました。金額の大きい商売ほど、この工程が信頼を作ります。
5. 曖昧な値は確定させない
- 読み取りが曖昧なときは、確定せず確認を返す指示を型にした
- 一般的にあり得ない値を指摘させる運用にした
図面から駐車場の高さ制限を読み取る場面で、1.55メートルを15.5と読み違えたことがありました。そのままにせず、AI側から「あり得ない値」と指摘が返り、修正の提案がついてきた。この挙動を指示の型として固定しておくと、事故の芽が早く見つかります。
6. 教えたことの記録
- 訂正した内容や決めたルールをファイルに書き出している
- 記録の置き場所を決め、担当者が替わっても読める
同じ利用者でも、教えた内容は自動では引き継がれません。ここを勘違いすると「昨日教えたのに」となります。記録をファイルにして、次の作業の前に読ませます。これはセキュリティというより運用の話ですが、ルールを守らせる土台になるので、ここに入れています。
7. 認証とアカウント
- アカウントの共有を禁止した
- 多要素認証を有効にした
- 複数人で使うなら、法人プランで管理者が権限を持つ
8. 実行するPCの保護
- OSとソフトの更新を適用している
- ディスクを暗号化している
- 公衆Wi-Fiでの業務利用を制限した
Claude Codeはローカルのファイルを扱います。PCそのものの保護が前提です。
9. 何かあったときの流れ
- 誤入力・誤出力が起きたときの報告先を決めた
- 影響範囲の確認と、関係者への連絡の手順を決めた
- 起きた事例を記録し、ガイドラインに反映する
10. 退職・異動時の権限
- 退職手続きにAIツールの権限削除を組み込んだ
- 自社のルールファイルや手順書の引き継ぎ手順を決めた
A4一枚のガイドライン ── 4つの柱
チェックリストを埋めたら、社員に配るA4一枚にまとめます。長い規程は読まれません。柱は4つです。
| 柱 | 書くこと |
|---|---|
| データの線引き | 入れてよい情報、入れてはいけない情報の一覧 |
| 権限 | 触ってよいフォルダ、使ってよいアカウント |
| 確認の工程 | 外に出す前に誰が何を見るか |
| 記録 | 教えた内容と訂正の記録をどこに置くか |
この4つが書いてあれば、新しく使い始める社員も迷いません。逆に、どれか1つでも空欄だと、現場は自己判断で動きます。
作った後は、運用しながら書き足す前提にしてください。最初から完璧を目指すと、作るのに時間がかかり、配った時点で古くなります。
業種別に気をつける点
扱う情報の重さは業種で違います。
- 製造業:給与データや出勤簿を預かって突合する場合、扱う期間と削除のタイミングを決めておく。親会社の監査がある会社は、監査項目との整合を先に確認する
- 不動産:外部サイトからの物件情報の大量取得は規約に触れる可能性がある。社内利用は問題なくても、自社サイト掲載や顧客への提出はグレーになりうる。出典のリンクを残す
- 士業:マイナンバーは対象外。顧問先ごとにデータを分離する
- 建設:元請から預かった図面や書類の再利用範囲を確認する
導入現場で実際に決めた運用
抽象的な話で終わらないよう、3社で実際に決めた運用を並べます。
| 会社 | 扱った情報 | 決めたこと |
|---|---|---|
| 住宅設備メーカー(受発注) | 取引先の注文書、登録マスタ | 読み取り結果を確定・要確認・未知の3色に分け、基幹システムへの入力は人が行う。担当者ごと・月ごとのフォルダで二重処理を防ぐ |
| 冷間鍛造メーカー(給与・月次) | 出勤簿、給与データ、月次業績 | 預かるデータの範囲と期間を決め、既存のExcelは作り替えない。AIは「貼る値を作るところまで」 |
| 不動産会社(入稿・契約書) | 物件図面、契約書、ポータルの登録情報 | 公開は下書き保存の手前で止める。訂正した内容は共有フォルダ直下のファイルに記録し、全員が参照する |
3社とも、AI側の設定より人が見る場所をどこに残すかを先に決めています。
よくある誤解3つ
「ローカルで動くから安全」 Claude Codeは提供元のサーバーと通信して動きます。ローカルのファイルを扱うという意味であって、通信しないという意味ではありません。だからこそ、入れてよい情報の線引きが要ります。
「有料プランなら学習に使われない」 個人向けプランは設定次第です。オフにして、確認した日付を記録してください。
「AIが判断を間違えるのが怖い」 間違えます。だから、確定させず確認を返す指示と、外に出す前に人が見る工程を残します。間違えないことを前提にした設計のほうが危険です。
情シスに説明するときの言い方
経営者が情シスや法務に説明する場面で、そのまま使える言い方です。
- 「学習への利用は設定でオフにし、確認した日付を記録しています」
- 「作業用フォルダだけを対象にし、人事・顧客・財務のフォルダは外しています」
- 「外に出す前に人が確認する工程を残しています。公開や送付は人が行います」
- 「入れてよい情報の一覧をA4一枚で配っています」
- 「教えた内容と訂正はファイルに記録し、担当が替わっても引き継げます」
この5つが答えられれば、ほとんどの場合は承認されます。
よくある質問
Q. 完全にオフラインで使えますか
Claude Codeは提供元のサーバーと通信して動きます。完全にオフラインで運用したい場合は、別の選択肢を検討することになります。中小企業では、扱う情報を線引きするほうが現実的です。
Q. 個人向けプランを法人で使ってよいですか
試す段階なら問題ありません。複数人で使う、権限を管理したい、という段階になったら法人プランに移すのが自然です。
Q. 取引先から「AIに入れないでほしい」と言われたら
その取引先の情報は対象外にします。ガイドラインの「入れてはいけない情報」に、取引先名を追記してください。
Q. 社員が勝手に別のAIツールを使っていたら
禁止するより、会社として使うツールと、使ってよい範囲を決めて配るほうが早いです。無許可利用は、ルールが無いところで起きます。
Q. 事故が起きたことはありますか
読み取りの誤りは起きます。だからこそ、確定させず確認を返す指示と、人が見る工程を残しています。事故に至る前に止まる設計にしておくことが、対策そのものです。
まとめ:今月の1アクション
- 守りは2層。差が出るのは自社の使い方の設計
- 個人向けプランは、学習への利用を設定でオフにして記録する
- 外に出す前に人が見る工程と、教えた内容の記録が、実務で効く2点
今月の1アクション:入れてよい情報/いけない情報の一覧を、A4半分でよいので書き出す
10項目を一度に埋める必要はありません。3番目の情報の線引きだけ先に作ると、社員は今日から迷わずに使えます。
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実際の導入で何を決めたかは不動産会社のAI活用事例と社労士のAI活用に書いています。