Claude Code Skillsとは ── 手順書を「機械が読める形」にして、自社の業務を資産に変える
「Claude Code Skills」という名前を見て、プログラマ向けの拡張機能だと思われることが多いのですが、実態は違います。
Skillsは、手順書を機械が読める形にしたものです。「弊社の受注処理はこうやる」「うちの記事はこういう文体で書く」という手順を一度書いておくと、次からは一言で同じ品質の作業が回ります。
私たち自身、社内の業務のほとんどをSkillとして持っています。経費処理、議事録、商談の日程調整、記事の執筆。顧客企業にも、受発注や記事制作のSkillを納品してきました。その実例をもとに、経営者向けに整理します。
Skillsとは何か ── 一言で
業務ごとの手順書を、Claude Codeが読んで実行できる形にしたファイルです。
普通の手順書と違うのは、読むのが人ではなく機械だという点です。人が読む手順書は「だいたい分かればいい」で済みますが、機械が読む手順書は、判断の分かれ目がすべて書かれている必要があります。
この「すべて書く」作業が、実は自社の業務を言語化する作業そのものになります。
自社のルールファイルとの違い
Claude Codeには、自社の基本情報を覚えさせるファイル(CLAUDE.mdと呼ばれます)もあります。役割が違います。
| 自社のルールファイル | Skills | |
|---|---|---|
| 書くこと | 会社の基本情報、文書の書き方、社員名 | 特定の業務の手順と判断基準 |
| 単位 | 会社に1つ | 業務ごとに1つ |
| 呼び出し | 常に読まれる | その業務のときだけ読まれる |
| 例え | 新入社員に渡す会社案内 | 業務ごとのマニュアル |
会社案内があっても、受注処理はできません。業務ごとのマニュアルが要ります。それがSkillです。
実際に作ったSkillの例
受注処理(住宅設備メーカー)
注文書のPDFを読み取り、登録マスタと突き合わせ、基幹システムに入力する前の確認用Excelを作る業務です。
担当者がやることは、自分の名前のフォルダに注文書を入れて、「受注処理して」と一言だけ。取引先・納入先・品目の判定が一覧で表示され、「Excelにして」と言えば確認用の表ができます。
Skillの中には、こういうことが書かれています。
- 単価はマスタから引かず、注文書に書かれている値を使う
- 取引先の支店が違うときは「要確認」にする
- マスタに無い品目は「未知」にして登録を依頼する
- 処理が終わった注文書は、処理済みフォルダへ移す
ひとつひとつは細かい決め事ですが、これが書かれていないと、毎回同じことを説明することになります。月800件の注文書を処理していたこの会社では、月160時間の作業が約15時間になっています。
記事の制作(塗装・防水工事会社)
外注していた広報記事を、社内で作れるようにした業務です。
社長がやるのは3つだけ。テンプレートのフォルダをコピーして案件名に変える、ひと言メモを書く、写真を入れる。あとは「このフォルダで記事を作って」で下書きが出ます。
このSkillには、過去に外注で作った記事25本から抜き出した文体の基準、狙うキーワードの一覧、禁止する記号、記事の長さ、末尾の問い合わせ文までが入っています。外注をやめても質が落ちないのは、過去の成果物を基準として書き込んであるからです。
就労支援事業者の記事制作キット
同じ発想で、就労支援の事業者には「先方が自分で記事を作れるキット」を納品しました。記事を書いて渡すのではなく、書ける仕組みを渡す。外注し続けない形にすると、定着します。
なぜ「資産」になるのか
中小企業の最大の資産は、ベテランの頭の中にある手順と判断基準です。同時に、最大のリスクでもあります。その人が休むと止まり、辞めると消えます。
Skillを作る過程で、この手順が言葉になります。
製造業の案件で、経営企画の部長が毎月ひとつだけ手入力していた品番がありました。理由を追うと、同じ製品でも社内加工と外注加工で単価が違うのに、基幹システムがその区別を持っていなかった。647品番のうち1行だけの例外です。属人芸に見えていたものは、言葉にしてしまえば引き継げるルールでした。
Skillは、この「言葉にしたルール」を置いておく場所です。人が替わっても、手順は残ります。
作り方 ── 5つの段階
1. 業務を1つ選ぶ
定型で、件数が多く、付加価値が低い業務から選びます。最初から「見積の判断」のような難しい業務を選ぶと、言語化の段階で止まります。
2. 実物のデータで、まず動かす
Skillを書く前に、AIに業務をやらせてみます。うまくいかない箇所が、そのまま「書くべき判断基準」です。
3. 直したことを記録する
「ここは違う」「この場合はこうする」と直した内容を、その都度ファイルに書き足します。不動産会社の案件では、訂正した内容を共有ドライブ上の作業フォルダ直下に置き、全員が同じルールを参照できるようにしました。
教えた内容は自動では引き継がれません。 記録しなければ、翌日には消えています。
4. 手順書としてまとめる
直した記録がたまったら、それを手順書の形に整えます。ここまで来ると、Skillの原型ができています。
5. 一言で呼べるようにする
「受注処理して」「記事を作って」のように、業務名で呼べる形にします。担当者は、手順を覚える必要がなくなります。
Skillに書く内容 ── 受注処理の例で骨組みだけ
実際のSkillの中身は、業務ごとに違います。受注処理の例で、骨組みだけ示します。
# 受注処理
## 目的
注文書PDFを読み取り、基幹システム入力前の確認用Excelを作る
## 入力
- 担当者ごとのフォルダに入った、その月の注文書PDF
## 手順
1. PDFから取引先・納入先・品目・数量・納期・単価を読み取る
2. 登録マスタと突き合わせる
3. 結果を3色に分ける(確定/要確認/未知)
4. 確認用Excelを出力する
## 判断のルール
- 単価はマスタから引かず、注文書の記載を使う
- 取引先の支店が違うときは要確認
- マスタに無い品目は未知にして、登録を依頼する
- 数量や納期が食い違うときは整合チェックの印を付ける
## 出力
- 確認用Excel(22列固定)を月別フォルダへ
- 処理済みの注文書は処理済みフォルダへ移す
「判断のルール」の節が、この会社の資産です。最初は3行でした。運用しながら、直したことをここに足していきました。
Skill化する順番 ── 社内40以上のSkillから
私たち自身、経費処理、議事録、商談の日程調整、記事の執筆、メールの返信など、40以上のSkillを社内で使っています。1年以上かけて増えたもので、順番には傾向がありました。
- 毎月同じ形で発生する転記(経費、請求、受注)。件数が多く、最初に効く
- 録音からの文書化(議事録、マニュアル)。次に効果を実感しやすい
- 定型の社外発信(記事、返信)。基準さえ書けば品質が安定する
- 判断を含む業務(査定、見積の下ごしらえ)。判断基準の言語化が先
4番目から始めると、言語化の段階で止まります。1番目から順に、が実際の経験則です。
注意点
ベテランの時間が要る
判断基準を説明できるのは、その業務を長くやってきた人だけです。その人の時間を確保できないと、Skillは書けません。技術的な作業より、ここに時間がかかります。
最初から完璧を目指さない
初版は薄くて構いません。使いながら書き足すほうが、結果として厚くなります。完璧を目指して作り始めると、完成する前に熱が冷めます。
成果物の権利を決めておく
外部の支援を受けてSkillを作る場合、作ったSkillを誰が使えるかを契約で決めてください。私たちの契約では、顧客企業が契約終了後も無償・無期限で社内利用できる形にしています。支援が終わったら使えなくなる、という形では資産になりません。
新しい属人化を作らない
Skillを作った人しか動かせない、という状態にしないでください。属人化を解くために始めたはずです。手順書を残し、動かせる担当者を1人以上にします。
よくある質問
Q. プログラミングの知識が要りますか
要りません。Skillの中身は日本語の手順書です。「この場合はこうする」を文章で書きます。
Q. どのくらいの数のSkillが必要ですか
業務1つにつき1つです。最初は1つで十分です。私たちは社内で40以上持っていますが、1年以上かけて増えたものです。
Q. 業務が変わったらどうしますか
Skillを書き換えます。紙のマニュアルと同じで、更新しなければ古くなります。訂正の記録をためておくと、更新が楽です。
Q. 他の会社のSkillを流用できますか
骨格は流用できますが、判断基準は会社ごとに違います。受注処理のSkillでも、単価の扱いや取引先の判定は自社の実物データで作り直す必要があります。
Q. Skillを作るのにどのくらいかかりますか
技術的な部分は数日です。時間がかかるのは、判断基準を言葉にするやり取りで、数週間の幅を見ておいてください。
まとめ:今月の1アクション
- Skillsは手順書を機械が読める形にしたもの。プログラムではない
- 作る過程で、ベテランの判断基準が言葉になる。そこが資産
- 教えたことは記録する。記録がたまれば、Skillの原型になる
今月の1アクション:毎月同じ形で発生している業務を1つ選び、AIに直したことを1週間だけ記録する
1週間分の記録を読み返すと、自社の判断基準が何行かに見えてきます。それがSkillの最初の中身です。
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実際の導入現場での使い方はClaude Codeの使い方を経営者向けにに、業種別の事例はAI業務効率化の事例集にまとめています。