Claude Codeの使い方を経営者向けに ── 実際の導入現場で最初にやった3つのこと
「Claude Codeの使い方を調べると、プログラムの話ばかり出てきて、自社の業務にどう使えばいいか分からない」。経営者の方から、いちばん多く聞く言葉です。
公式の解説や技術ブログは、開発者向けに書かれています。ただ、実際の導入現場でClaude Codeを動かしているのは、製造業の総務部長であり、不動産会社の営業担当であり、塗装会社の社長です。プログラムは書いていません。
その方々が最初に動かした3つの業務と、指示の型、つまずいた場面を書きます。
最初の3つ ── 現場で実際に選ばれた順
導入現場で最初のテーマになった業務は、だいたいこの3つのどれかです。
- PDFから一覧表を作る(注文書、出勤簿、請求書)
- 録音から議事録やマニュアルを作る
- 自社のルールを覚えさせる(教えたことを記録し、次に読ませる)
3つとも、今あるExcelとメールのまま始められます。新しい機械は要りません。
1. PDFから一覧表を作る
なぜこれが最初か
中小企業の事務で、いちばん時間を食っているのがPDFの転記だからです。同じ形式が毎月大量に発生するので、効果がすぐ数字で出ます。
実際の場面
住宅設備メーカーでは、取引先から届く注文書のPDFをフォルダに入れると、取引先・品目・数量・納期・単価を読み取って、基幹システムに入力する前の確認用の一覧表ができる形にしました。1件10〜15分かかっていた作業が1分以下になり、月160時間が約15時間になっています。
冷間鍛造のメーカーでは、給与計算に使う出勤簿が94ページのPDF画像でした。文字データではなく、紙をスキャンしたものです。それでも読み取れて、846セル中846セルが一致しました。手書きの修正13件も正しく読めています。
指示の型
最初の指示は、このくらい素朴で構いません。
このフォルダの注文書PDFを全部読んで、取引先・品目・数量・納期・単価をExcelの一覧にしてください。
出てきた結果を見て、直してほしいところを伝えます。「単価はマスタから引かず、注文書に書いてある値を使って」「取引先の支店名が違うときは色を付けて」。こうしたやり取りを2〜3回すると、自社の形になります。
大事な設計
AIに全部やらせないことです。注文書の案件では、読み取り結果を確定・要確認・未知の3色に分けました。担当者が目を通すのは、要確認と未知だけです。全件を疑いながら見るのと、1割を集中して見るのとでは、疲れ方が違います。
つまずいた場面
FAXのスキャン画質が取引先ごとにばらつき、最初の読み取り精度は8割ほどでした。ここで「使えない」と結論を出しかけました。効いたのは技術ではなく、件数の多い取引先10社に注文書の様式統一をお願いしたことです。
2. 録音から議事録やマニュアルを作る
なぜ2番目か
経営者本人が効果を実感しやすいからです。会議は毎週あり、議事録は誰かが必ず書いています。
実際の場面
冷間鍛造のメーカーでは、録音からWordの議事録を直接作る形にして、マニュアルごとお渡ししました。社長は自分のスマートフォンで録音し、文字起こしをメールでPCに送る運用に落ち着いています。
果物栽培の会社では、ベテランの作業手順を録音して、業務マニュアルを即日で作りました。現場インタビュー約2時間の録音から、20時間級の作業が約3時間になった例もあります。
指示の型
この録音を文字起こしして、議事録にしてください。冒頭に要点、決定事項、担当者別のやることを分けて書いてください。
効いたコツ
修正の指示は、途中の文字起こしにではなく、出来上がった議事録に対して出す。文字起こしの誤変換を一つずつ直そうとすると終わりません。最終的な議事録を読んで「ここは決定事項として書いて」と指示するほうが、手間が少なく、精度も上がります。
つまずいた場面
専門用語と社員名の誤変換です。次の項目で扱う「自社のルールを覚えさせる」で解決します。
3. 自社のルールを覚えさせる
なぜ必要か
ここを飛ばすと、毎回同じことを説明することになります。逆に、一度書いておくと指示が短くなり、精度も上がります。
実際の場面
不動産会社の案件で、担当の方が気づいたことがあります。同じ人が同じ環境で使っていても、教えた内容は自動では引き継がれない。「昨日教えたのに」となる場面が出ました。
そこで、訂正した内容や決めたルールをファイルに書き出し、作業対象のフォルダの直下、共有ドライブ上に置くことにしました。次に作業するとき、その記録を読ませてから始めます。担当が替わっても引き継げます。
書くこと
最初は、このくらいで十分です。
# 弊社のルール
## 会社
- 業種:製造業(金属加工)、従業員約60名
- 主要取引先:A社、B社、C社
## 文書の書き方
- 議事録は、要点・決定事項・やることの順
- 金額は税抜、日付は2026-09-04の形式
## 社員と読み方
- 山田太郎(やまだ・たろう)代表取締役
- 佐藤次郎(さとう・じろう)工場長
## 決めたこと
- 注文書の単価はマスタから引かず、注文書の記載を使う
- 支店名が違うときは要確認にする
完璧を目指さず、使いながら書き足す形にしてください。訂正したことをその都度足していくと、3か月後には自社専用の手順書になっています。
現場が見つけた工夫
不動産のポータルサイトで、沿線や駅を選ぶ画面がポップアップで開きます。この形式は操作できませんでした。ところが、タブで開かせると操作できます。担当の方が試行錯誤の中で見つけた抜け道で、こういう発見をルールのファイルに書き足していくと、作業が一気に進みます。
指示から手順書までの型
3つの業務に共通する、使い方の型です。
- やりたいことを伝える(ゴールだけ。手順は書かない)
- 計画を出させて、確認する
- 実行させる
- 結果に対して直してほしい点を伝える
- 確定したら、手順書を作らせる
- 次回からは、手順書を読ませて実行する
6番目まで行くと、毎月の作業が「この手順書で今月分をやって」の一言になります。住宅設備メーカーの受発注では、この一言に相当する短い呼び出しを用意し、担当者がそれだけで処理を回しています。
指示の良い例・悪い例
同じ業務でも、指示の出し方で結果が変わります。
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 業務を効率化して | このフォルダの注文書PDFを読んで、取引先・品目・数量・納期をExcelにして |
| いい感じに議事録にして | 冒頭に要点、次に決定事項、最後に担当者別のやることを書いて |
| 前と同じようにやって | 共有フォルダの「ルール.md」を読んでから、今月分を処理して |
| 全部自動でやって | 確定できないものは色を付けて、私が確認できる形にして |
共通しているのは、対象・項目・出力の形を言うことと、人が確認する場所を残すことです。
最初の1週間の進め方
| 日 | やること |
|---|---|
| 1日目 | Proを契約し、画面の操作に30分慣れる。ルールのファイルを作り、会社名と業種だけ書く |
| 2日目 | 月に件数の多いPDFを5枚だけフォルダに入れ、一覧表を作らせる |
| 3日目 | 出てきた表を見て、直してほしい点を3つ伝える。直したことをルールのファイルに書き足す |
| 4日目 | 直近の会議の録音を議事録にしてみる |
| 5日目 | 議事録の形式について、直してほしい点を伝え、記録する |
| 週末 | 1週間で減った時間を、ざっくりでよいので数える |
1週間でここまで来ると、「使える」感覚がつかめます。逆に、1日目から全業務を対象にすると、ほぼ確実に止まります。
やってはいけない3つ
最初から複雑な業務を試す。 「営業戦略を考えて」から入ると、満足な結果が出ず、「使えない」と判断してしまいます。定型で件数の多い業務から入ってください。
機密情報をそのまま入れる。 入れてよい情報の線引きを先に決めます。詳しくはClaude Codeのセキュリティにまとめました。
曖昧に指示する。 「業務を効率化して」では動きません。「このフォルダのPDFを、この項目で、Excelにして」まで具体にします。経営者自身が業務を言葉にできないと、AIにも伝わりません。
1週間・1か月・3か月の目安
| 時期 | 到達点 |
|---|---|
| 1週間 | Proを契約し、PDFの読み取りか議事録を1回試す。ルールのファイルを作る |
| 1か月 | 1業務が毎月回る形になる。手順書ができている |
| 3か月 | 2〜3業務が定着。社内に動かせる人が1人以上いる |
不動産会社の案件では、キックオフから約1か月で、担当の方が物件入稿と契約書作成を自分で動かせるようになりました。レクチャー2回と、約10日の習熟期間です。
よくある質問
Q. プログラミングの知識は要りますか
要りません。導入現場で動かしているのは、総務部長、営業担当、社長です。最初の30分だけ、画面の操作に慣れる時間が要ります。
Q. 最初の設定でつまずきそうです
1〜2時間、誰かと一緒にやるのが早いです。設定そのものは難しくありませんが、一人だと最初の一歩で止まりがちです。
Q. パソコンが苦手な社員でも使えますか
手順書ができてからなら使えます。最初に作る人は1人でよく、全員に同時に覚えさせる必要はありません。
Q. 社内に広めるには
実機を触る担当を1人決めて、その人が自走できるようになってから広げます。全員に薄く教えると、誰も自信を持てないまま終わります。
まとめ:今月の1アクション
- 最初の3つは、PDFから一覧表/録音から議事録/自社のルールを覚えさせる
- AIに全部やらせず、人が見る場所を残す
- 教えたことはファイルに記録して、次に読ませる
今月の1アクション:月に件数の多いPDF処理を1つ選び、実物のデータで読み取りを試す
サンプルではなく現物を使ってください。手書きの追記や様式の違いは、実物にしか現れません。
何から試すかを一緒に決めたい場合は、無料のAI活用診断(90分)で現状を伺い、件数と時間から最初の業務をお出しします。
実際の導入現場の詳しい話は製造業のAI活用事例3社と不動産会社のAI活用事例にまとめています。